青の空 6話 「ギター」




「このCDノブヒロの?」




コージから借りたモンゴル800のCDを持っておれの部屋に入ってきたのは
三番目の兄、山本和茂(やまもとかずしげ)だ。





「あっ、どこにあった?」






「玄関にあったよ。モンパチ聞いてんだ。」





「うん。友達に借りてるんだ。」






「のぶー、かずー、ご飯出来たよ〜」



いい匂いと共に母の声が響く。






今日はおれの好きな生姜焼きのようだ。









「のぶ、中学校は慣れた?」




母が尋ねる。






「うん」




「部活はバスケだっけ?」





「うん」






「練習は大変?」





「うん」




「怪我しないようにね」






「うん」





「勉強もちゃんとしなさいね」






「うん」






「デザートのアイスはいらないね」









「うん。ん?いる!いる!!」









一通り聞き出した後はバラエティ番組をみて爆笑する母。









友達に笑いのツボが浅いねと言われるのは母に似たのだろうか。
















面白いバラエティ番組を見終わって部屋に戻ろうとすると



兄の部屋からギターの音が聞こえる。






よく聞くとモンゴル800のフレーズを弾いている。






「おっ?」





兄の部屋に侵入する。







「モンパチじゃん!小さな恋の歌?すごいね!」






「ん?ああ。簡単だよ。」






「へー!いいなー。」






「やってみる?」





「え?うーん...うん!」





「この曲は簡単なパワーコードっていう押さえ方で、パワーコードっていうのは...」





普段は無口な兄だが音楽の事になると生き生きしていた。







「右手はずっと同じ。左手も形は同じで....」






兄と長い時間話すのも久しぶりだった。






「そうだこのギター使ってないから貸してやるよ。」








一通り教わった後、そう言って黒いボロボロのギターを差し出した。








「やったー!サンキュー!」







「テレキャスターっていうギターなんだぜ」








「ふーん」







ほんの少し弾けるようになっただけなのにギターを弾くのはとても楽しかった。








時折何気なく兄が弾く、弦を引っ張って早くて理解不能なフレーズがとてもかっこいいと思った。







「よーし、じゃあこのテレなんとかで練習しようかな!」







自分の部屋に戻ってその日は寝るまで小さな恋の歌を練習した。







完璧に弾けるようになったらコージに自慢しよう。

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