たった今廊下ですれ違った、背の高いオーラを放ちながら歩くあの男はサッカー部3年の元キャプテン、木村さんだ。
「くそ...あの人が長谷川さんの彼氏か。長谷川さんの誰にも見せない顔をみたりしてるんだろうなぁ。きぃー!もうこうなったらあの人の上履きに画鋲びっしり詰め込んでやるー!!」
「って思ってんだろ?ノブ」
「思ってねーよ!バカかお前!」
と、コージに言い返しつつ、前半部分はあながち間違いでも無い事を悟られないようにする。
「もういいんだよ、長谷川さんの事はどうだってー」
「ほんまかいなー。顔に忘れられませんって書いてあるよ?」
「書いてねーよ!コージうざいって書いてるわ!」
どん。
誰かと肩がぶつかる。
「あ、ごめん!」
「おう、」
「あれ、タツザキじゃん!」
「おう、ノブ」
「久しぶりだな!」
こいつはバスケ部一年の竜崎俊也(タツザキ トシヤ)。
あまり学校に来ない。俗に言う不登校だ。
「おう。やっぱり学校って、だるいな」
「まあまあそう言わずにさ。今日部活いくだろ?一緒に行こうぜ」
「おう、いいな」
そういうとタツザキは白い顔をしてふらふら〜と廊下を歩いて行った。
「あんなやついたっけ?」
「バスケ部だよ。全然学校来ないからなあいつ」
「ヤンキーだな」
放課後、約束通りタツザキと一緒に部活にいくためにあいつを探す。
イヤホンで音楽を聴きながら歩いているタツザキを見つける。
「なに聴いてんの?」
「ああ、これはニルバーナ」
「ニルバーナ?なにそれ?」
「洋楽のロックだよ。聴いてみる?」
「....これは...かっこいいな!!」
「だろ?今度CD持ってきてやるよ」
「本当?頼むよ!」
「んじゃ、いくか部活」
だるいだるいとよく言うタツザキは久しぶりにバスケをして案外楽しそうだった。
「今週末、金田二中と練習試合することになった。新人戦ぼ地区予選では必ず上がってくるチームだ。気合い入れていくぞ」
「はい!」
新チームになって初めての対外試合だ。
「タツザキお前も練習試合いくよな?」
「いや、行く手段が無いから...」
「じゃあ、うちの車乗ってく?」
「え、いいの?」
「あぁ、全然いいよ!」
「すまん...ありがとう」
次の日、タツザキはまた学校に来なかった。
よっぽど学校が嫌いなのか。
部活の時間になり、体育館にいったらドリブルしているタツザキの姿があった。
「おい!お前、部活だけ来たの!?」
「あ、うん」
「お前、バカだなー!絶対先生に怒られるだろ?」
「そうか?」
その後も学校は来ないものの、部活はよく来るようになった。
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