青の空 9話「ガラスの少年」



ピンポーン。







「ノブ〜友達だよ〜」






母の声がする。






休みの日にわざわざ誰だろう?









「これ見ようぜ!」





そう言って少年野球の最後の大会のDVDを差し出したのは



いつもの5人組の一人、野球部の小西照英(コニシ ショウエイ)。








「うわ!そんなのあったの?見よ見よ!」







少年野球チームでおれはセカンド、コニシはピッチャーだった。







この大会で優勝してマウンドのあたりで二人で抱き合ったのはまだ記憶に新しい。








「あ、そうそうこの試合でおれのファインプレーがあったんだよ」





そのシーンが見たくて早送りをする。





「あ!ここ!ほら、かっこいいでしょ?」






「ああ、これな。まあよかったな。でもお前新人戦のときエラーして2点入った時あっただろ?」






「あー...あれね。あのときのマウンド上の失望した顔のコニシを鮮明に覚えてるよ」








辛い練習を共にした友との思い出話はとても楽しかった。









「中学も頑張れよ。お前なら1年からスタメンとれるんじゃない?」






「どうだろうなー。まあ頑張るよ」







「なんか野球したくなってきたな...」





「お、いいね!みんな集めて野球やるか!」





コニシと手わけして友達の家を回る。






みんなそこそこ近所だ。






ヤマト、エノケン、コージが集まる。






「結局この5人かよ」





「5人で野球できなくね?」






「家遠いけどザワも呼ぶか」





「いや6人でもできなくね?」






チャリで颯爽と現れたザワを含め6人で近くの空き地でなんとなく野球をやり始める。






ピッチャーはおれ。






バッターはコニシ。






「さっ、こーーーーい!!」





コージやザワが騒ぐ。









「ノブ、本気で来いよ」







「ふっ。後悔するなよ」








全身全霊のストレート放り込んだ。








「カキーン!」







見事にクリーンヒットしたコニシの打球はおれの頭上を越え、外野のザワの頭上も越え、離れた民家に向かっていく。









「やばい!!」







まさか...







「ガッシャーン!!」









そのまさか、人の家のガラスに直撃の場外ホームランだ。











「ど、どうする...?」







「どうするってお前...」







「逃げるしかないだろ!」












「こらぁーーーー!!!」








おっさんの怒号が鳴り響く中、




おれたちは全力で走った。














「はあ、はあ、ここまでくれば大丈夫だろ」






「ノブ、おれの勝ちだな」




コニシが満足げに言う。






「ああ、完敗だよ。ただちょっと飛ばしすぎだ」







「あのハゲのおっさんの顔見た?すごい形相だったよ」




コージがそう言う。




みんなの笑い声が響く。








「いやー楽しかったな!」






「またやろうな」






5時のチャイムが鳴り、夕暮れの中






おれたちは笑顔で手を振った。















学校にバレて長〜い説教をくらうのは少し後の話だ。





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