「え!やばい!開かない!」
「くそ!閉じ込められた!?」
「このまま死ぬのか...?」
時は少し遡り、
放課後、公園で遊んでいた。
「ちょっと寒いからあの中入ろうぜ」
「ははっいいな!」
その場のノリで掃除用具などが入っている小さな小屋に入った。
「は〜あったかい」
「暗くてなにも見えないんだけど」
「おい、3人入ると狭いな〜」
「おい、押すなよ」
ガチャン。
何かの拍子に鍵が閉まった。
「え、まさか...」
「やばい鍵が閉まった!!閉じ込められた!!」
コージが甲高い声で叫ぶ。
「は?バカ言うなよ!」
扉を開けようとする。
ガンガン!
「本当だ...開かない」
これはまずい事になった。
「なんで閉まったんだよ!?公園には俺たちしかいなかったはずだろ!?」
「お前が暴れるからなんかの拍子に閉まっちゃったんだよ!」
「そんな事言っても!」
「二人とも落ち着け!」
焦りからか言い争うおれとコージを制したのは榎本健二(エノモトケンジ)。
通称エノケン、いつもの5人組の一人、コージと同じサッカー部だ。
「鍵っていうのは大体、内側から開けれるようになっているだろ。この倉庫も例外じゃなければ必ず内側から開けれるはずだ!」
5人の中では一番勉強ができるエノケンがそう言う。
「え、エノケン...!」
いつもは一緒にふざけあっているエノケン。
いやに頼もしく見えた。
「ちょっと貸してみろ」
エノケンが扉を物色する。
「この辺か...?」
暗闇の中、エノケンの作業を見守った。
もし開かなかったら...
最悪の事態が頭をよぎる。
俺たち二人はエノケンを信じるしか出来なかった。
きっと出れる。
おれたちの未来はまだまだ続いていくんだ。
そう信じて。
数分後。
ガチャン。
「開いたっ!!」
「おーーーーーー!!!!」
扉が開いた瞬間、オレンジ色が飛び込んでくる。
太陽が山に半分隠れていた。
「夕焼けだ...」
「綺麗だな...」
「おれたち...生きてるんだな」
「ああ...シャバに出られたんだ...おれたちはもう、自由だ!」
「もう、誰にも縛られる事はないんだ!」
「大げさだなお前ら...」
そう言ってエノケンは笑った。
「エノケン、ありがとうな」
「たぶんコージとおれ二人だったら死んでたよ」
「生まれて初めてエノケンの事かっこいいって思ったよ」
「ああ、初めてだな。寝てるとき目が開いてるだけのやつかと思ってたよ」
「お前ら...もう一回あの中入るか?」
「すいませんでした」
「調子に乗りました」
夕焼けによって映し出された3つの影が仲良く伸びていた。
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